2015年2月1日日曜日

高知の山の上で本屋をする訳~高知・山の上の本屋「うずまき舎」さん(3)

猫コーナー




さて、うずまき舎店主のちよさんに、
どのようにして「山の上の本屋」うずまき舎さんが生まれたのか
お話を聞いてみましたっ。


―ちよさんは元は神戸の人なんですよね?

ちよ「そうです。父の実家は島根県の山間にあり、
子どもの頃からそこでの暮らしをいいな、と思っていました」


―高知には、どんな経緯で来られたんですか?

ちよ「手仕事に興味があったので、学生時代は陶芸を専攻しましたが
仕事に結びつけるのは難しいと感じていて。
クラフト系の小売店に就職し、その後はメーカーに勤めていました。
都会で仕事をして暮らしつつ、どこか違和感を持ち続けていたのですが、
そんな時に訪れたギャラリーで、早川ユミさんの本に会ったんです」


―高知在住の布作家さん。

ちよ「そうです。
手仕事や畑仕事をしながら、自然のなかで暮らすという、
20代のころに抱いていたぼんやりとした夢が
ユミさんの著書を読んで、ワークショップで実際に本人にお会いすることで
急に現実感を帯びてきました。
“いつか実現したい”と漠然と思っていたことを
実際にやっている人が目の前にいるのですから。
それで“いつかは”という、漠然とした絵空事のようだったことが
“もしかしたら私にもできるのかも”と、思えるようになりました。
ユミさんは高知の棚田が広がる山の上で、感性を活かして手仕事をしながら生きていて、
その環境も含め、とても魅力的でした」


―そこで早川さんのいる高知へ。

ちよ「家を探すにも、神戸から通いだと埒があかないので
先ずは高知市内のアパートを借りて、そこから、求めるような山の家を探すことにしました。
当初はほとんど会社員時代の蓄えを切り崩して生活していましたが
移住した翌年、ユミさんのお仕事の手伝いをさせていただけることになって
今の家をお借りすることができました。

そうして“山の家”に住むことはかなったのですが
そこで取り組むべき“自分の仕事”の方ははなかなか見つけられずにいました。
仕事をしながら、ユミさんは、私が本当にしたいこと、できることは何か
何をしている時が一番夢中になれるのか、
そんなことを、くりかえし問うてくださいました。
それでようやく“本”にたどりついた感じです。

実は店をひらくことを考えていた当初は、
山の上で営業するのは難しいと考えていて、
麓の町で物件を探していました。
ところが、なかなかよい物件が見つからず
しかたなく山の上で店をオープンさせたんです。
でも結果としては、それが一番の特徴というかインパクトになって
とても良かったのではないかと思っています。

どうしても仕事になると“イヤだけど仕事だからやらなきゃ”っていうことがありますよね。
たとえば“特に好きな本じゃないけど、売れ筋だから入れなくちゃ”とか。
でも妥協せず、好きなことだけでどこまで勝負できるか、ということを
突き詰めたいと思っているんです。
もともと、売れ筋だけではない、店主の意志が感じられる本屋さんが好きでしたしね。

ここにある本のほとんどは、委託されて置き場所を提供しているのではなく、
自分で選んで、自腹で買い取った本もあり、大切な自分の資産なんです」



本好きさんが夢中になる編集の書棚


―出版不況と言われる時代に、あえて売れ筋や委託販売に頼らずにやっている。

「地元の神戸にあった海文堂という老舗の本屋さんが
100周年を目前にして閉店してしまったのは衝撃でした。
でも、生き残るおもしろい本屋さんもある。

また、皆がアマゾンのようなネット書店で本買うようになって、
町の本屋さんがもっと減ってしまったら
ネットで売りにくい本は、出版されなくなるのではないかという危惧もあります。
目立たなくて売りにくくても、面白い本、価値がある本、というのもありますので。」


―高知の山間での生活はどうですか?

ちよ「お祭りの前にはみなで神社の掃除をしたり、
定期的に草刈りがあったり、
お年寄りが多いこともあって、移住間もない私にも自治会の役がまわってきたりします。
もちろん都会暮らしにはない大変さもありますが、それも込みのここでの生活。

店を作るにあたって、地元の大工さんなど
たくさんの人に協力してもらって成り立っているので、
その人たちにお返しする意味でも、店を長く続けていきたいです。
それにお客さんにとって、アクセスしづらいところにある店なので、
せっかく来てくれたからには
“欲しい本がいっぱいあって困る!”という状態にしておきたいですね」


なお、最近ちよさんがグッと来たのは「大草原の小さな家」シリーズなのだとか。
大人になって読み返したら、自然のなかでの暮らしの過酷さと豊かさが
子細に描かれていて驚かれたそうです。

また「ガンバとカワウソの冒険」で知られるカワウソのガンバシリーズは
高知の仁淀川や四万十川をイメージされているということも教えてくれました。知らなかった…!!

さらに「畑にも手をかけたいんだけどなかなか時間が取れなくてね・・・」と
話してくださったちよさん。
生活に対する溢れる好奇心が、高知での自身の生活にきちんとつながっていて、
その幅広い興味はそのまま、うずまき舎さんの書棚に息づいています。
そんな新しい世界との思いがけない出会いを求めて、何度でも足を運びたいお店です。
街からすぐに行ける場所ではありませんが、
お客さんは皆、ちよさんとお話しながら本を選ぶ贅沢なひと時を求めて、訪れるのではないでしょうか。
春になったら、私も本店に行きたいと思います。



(終わり)
ちよさん、一緒に行ったHちゃん、Cちゃん、どうもありがとう♡

*取材協力: NPO法人FUSE

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